「一人担任って、大変じゃない?」
そう聞かれるたび、私も「うん、大変」と思います。
でも、一人担任だからこそ見えた景色があります。
それは、“子どもたちがクラスというチームになっていく過程”を、誰より近くで、最初から最後まで見届けられること。
最下位から優勝をつかんだリレー。
初挑戦のソーラン節で感じた一体感。
そして卒園後にも受け取った愛の結晶…。
一人担任として過ごした4年間。どの年も、私はクラスの全員と、喜びも悔しさも分かち合いながら、「集団の成長」という奇跡に立ち会うことができました。
今日は、クラス全体が育っていくことの尊さと、一人担任だからこそ味わえた“あたたかい奇跡”をお届けします。
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【悔しさからの成長編】ビリからの優勝

年長クラスが5つもあったマンモス幼稚園に勤めていた私。
同学年が多いと、勝負事に熱が入るのも事実。
そして、年長担任になったその年。新学期が始まると、年長児クラス対抗全員リレーをしたのですが———
最下位・・いや、ボロ負け。
優勝したのは、私がその前の年に年中児で受け持っていた子たちが揃うクラスでした。
悔しい。悔しい!
その悔しさは、子どもにも伝わりました。
「せんせい!うんどうかいでは、ぜったい1ばんになろうね!」
子どもたちからそんな声がでてきたので、それから戸外遊びや室内でも、運動遊びを増やし、遊びの中に全身運動をたくさん取り入れました。
楽しみながら、たくさん身体を動かし、運動会前には、バトン渡す練習を何度もしました。
そして、見事、10月の運動会で———
みごと 優勝!!
4月はビリケツだったのに・・・
半年間、あの悔しさを忘れずにいた子どもたちが勝ち取った優勝。1位!
最高に嬉しくて、子どもたちと抱き合って喜んだあの日を、昨日のことのように覚えています。
一人で見守ってきたからこそ、最初の悔しさも、その後の成長も、全部まるごと一番近くで感じられたのです。
それから、結束がさらに強まったのは言うまでもなく、とてもいいクラスになりました。
悔しさを頑張る力に変えられたあの子たちは、きっとそれからも、諦めない気持ちをもって大きく育ってくれたと思います。
【挑戦編】園に新しい風を入れたソーラン節

私が勤めていた園には、「これまでやってきたことを続ける」という風潮が根強く、新しいことを取り入れるのは簡単ではありませんでした。
もちろん、”続ける良さ”もあるのはわかります。けれど私は、新しい風を取り入れたいと思っていました。
そんなとき、テレビで見かけたソーラン節。
少し流行していたこともあり、運動遊びの一つとして取り入れ、子どもたちと踊ってみたところ、思った以上に大盛り上がり。
力強い動きに夢中になって踊る子どもたちの姿を見て、
「これ、発表会でやってみたいかも。」
そう思い、「遊戯でソーラン節をやりたいです!」と提案しました。
ところが返ってきたのは、「前例がないから」という理由で即却下。
それでも諦めきれませんでした。
子どもたちが本当に楽しそうに踊る姿を、どうしても発表会で見てもらいたかったからです。
私は、ソーラン節の振りを年長児でも無理なく踊れるようアレンジし、舞台でも映えるように立ち位置も工夫。
しっかり構成を練り直し、再度提案に行きました。
すると今度は———
「そこまでちゃんと考えたのなら・・」とGOサイン。
ついにOKをもらえたのです。
子どもたちは、伸び伸びと表現し、発表会は大成功。
他のクラスの子まで、見様見真似に覚え、楽しんで踊るようになりました。
子どもたちは、”やらされる”のではなく、”やりたい”という気持ちが強くあったからこそ、最高の笑顔を見せてくれました。
ひとりで子どもたちの「やりたい」を受け止めて、一緒に形にしていけたあの時間。
一人担任だからこそ、子どもたちと向き合う中で見つけられた挑戦だったのかもしれません。
それから、あのクラスの子たちが踊ったソーラン節は、20年以上たった今でも、発表会でも定番の遊戯となり踊り継がれているそうです。
子どもたちの可能性を信じ、行動した結果、子どもたちの成長を見れ、みんなで楽しむことができた。
新しい風を取り入れるきっかけをつくってくれた子どもたちに、感謝した出来事でした。
【感謝の結晶編】卒園児からの結婚式サプライズ

結婚を機に、私は勤めていた幼稚園を退職しました。
引っ越し先は県外。私には結婚式には教え子に参列してほしいという小さな夢がありました。しかし、結婚式も新居近くでやることになり、教え子たちを招待するのは、現実的に難しいと思っていました。ました。
最後の年、私は年長クラスの担任をしていました。
全員を無事に卒園まで見届けられたことで、やり切ったという思いがありました。
子どもたちに会えなくなるという寂しさはあっても、園を離れることに未練はありませんでした。
そして、退職から4か月後。結婚式当日———
披露宴終盤、会場のスクリーンに、突然、卒園児たちからのお祝いムービーが流れたのです。
驚いている私の目に飛び込んできたのは、見覚えのある笑顔、声、懐かしい名前の数々。
最後に担任したクラスの保護者たちが中心となって、過去に受け持った子たちにまで声をかけてくれたのです。
ただでさえ感激して泣きそうになっていたその時———
「せんせ~~~~~~~い」
と、声が聞こえ、振り返ると会場の扉から飛び込んできたのは、10人以上の子どもたちと保護者たち。
なんと、はるばる県外までサプライズで駆けつけてくれたのです。
会場中が、涙と笑顔に包まれました。
「どうしても、直接お祝いがしたくて・・」
そう話してくれた保護者の方の言葉は、今でも私の宝物です。
私はこれまで、一人担任として毎日子どもたちと向き合い、時に悩みながらも、喜びも、苦労も、全部1人で引き受けてきました。
だからこそ、子どもたちの「ちょっとした変化」に気付けたり、心の奥にある気持ちに気付いて寄り添えたのだと思います。
一人担任で築いた関係は、強い絆で結ばれていたのだと、このサプライズで改めて実感しました。
子どもたちと心を通わせてきた毎日が、こんな形で返ってくるなんて———
あの日、頑張って過ごしてきたこと、すべてが報われたような気がしました。
一人担任だったからこそ築けた、子どもたちとの絆。
それは、私の人生の中でも、何よりの「感謝の結晶」となったのです。
誰よりも近くで成長を感じられた時間

一人担任は、正直しんどいこともたくさんあります。
いいことばかり書いていますが、正直、大変で泣いたこともありました。
仕事が終わらず、寝れない日だってありました。
頼れる相手がいない分、子どものことで悩んでも、自分で抱えて向き合わなきゃいけない。
それでも———毎日同じ子たちと、1日を過ごし、全員の表情やつぶやき、ちょっとした変化に寄り添えるのが、一人担任の強みだと思います。
全体を見ながら、一人ひとりの成長を見逃さずに拾う。
集団の中でのドラマも、挑戦への過程も、感情の変化も、全部自分自身で感じられる。
どれも、簡単ではないけれど、向き合う姿勢を忘れず関わる。
———すると、子どもたちが見せてくれるその時間は、まさに保育者にとっての最前列であり、特等席です!
「この子変わったな~」「今ちょっと、乗り越えたな」
そんな時間をいちばん近くで見つめられるのは、一人担任だからこそです。
大変さと引き換えに、保育の本来の楽しさにいちばん触れられる。
それが、一人担任の魅力だと、私は思っています。
4話と5話でつづったこのエピソードたちも、全部、私だけが見てきた物語。
あなたにも、きっとあるはず。あなただけが見られる物語。
子どもたちと一緒に泣いて、笑って、悔しがって、感動して———
その積み重ねが、いつかきっと、心から「この仕事していてよかった!」と思える力になってくれるはずです。
あなたの頑張りは、必ず誰かのためになり、誰かの生きる力となります。
それを信じて、あなたの子どもたちと一緒に、保育を楽しんでください。
最終話は、長年の保育士人生を振り返って「やっぱり保育が好き」と思えた瞬間を届けたい。
▶【保育士歴15年】それでも「保育が好き」と言える理由
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