「なんでうちの子、この役なの…?」
発表会の配役を聞いて、少しモヤッとしたこと、ありませんか?
パパ・ママが「どうして?」と思うのと同じくらい、
実は保育士も「どうすれば 全員が納得できるのか」と悩んでいます。
それくらい、配役決めは本当に難しく、神経を使うものなんです。
この記事では、現役保育士の立場から配役の決め方と、その裏にある本音をお伝えします。

なぜ発表会の配役で不満が出るのか?
まずは、なぜパパ・ママが不満に思うのかを考えてみましょう。
 思っていた役じゃなかった
 出番が少ない・セリフが短い
 衣装が地味でかわいくない
パパ・ママからすれば、やはりわが子の頑張る姿は、1秒でも多く見たいものですよね。
また、ママ友の子どもとの役柄を比べてしまったり、SNSで可愛い衣装を着ている子を見たりすれば、モヤモヤはどうしても増えてしまいます。

おばあさん役の地味な衣装より、シンデレラのドレスを着ている方が、
そりゃ~可愛く見えますもんね!
「うちの子だったら、もっと台詞が多くて出番の多い役ができるのに…」
子どもの頑張りを見てきたママ・パパほど、そう感じやすくなるものです。
私自身保育士でもありますが、親でもありますので、その気持ちは本当によくわかります。
配役の納得できず不満に思うことは、親としてとても自然なことなんです。
保育士も悩む!迷う!配役決めの裏側


役によって、出番やセリフが多いのはどうしても仕方がありません。
でも、「できる子だから」だけで決めているわけではないんです。
しっかり者の子でも、人前に立つのは苦手な子もいます。
セリフ量が多くて、途中で投げだしてしまいそうな子もいます。
一人では不安だけど、誰かと一緒なら頑張れる子もいます。
それらすべてを考慮して、配役決めは慎重に進める必要があります。
「発表会」という大きな行事が、どの子にとっても成長につながるものになってほしい。
だからこそ、「やりたい子」「できそうな子」「頑張ってほしい子」———
それぞれのバランスを取るのが本当に難しいんです。
もちろん、やりたい気持ちは大切にしています。
でも、最初に希望した役にならなくても、その役が「やらされた役」にならないようにすることを何より大事にしたいんです。
複数担任であれば、担任同士で意見が割れることもあります。
そんなときにはお互いの意見・考えを言い合い、とことん話し合います。
そうすることで、自分だけでは見えなかった子どもの特性が見えてくれこともあるんです。
また「どうしても○○がやりたい!」と頑として譲らない子には、その役の話を丁寧にして、最後までやりきれるかどうかを一緒に確認します。
子ども同士の関係性や、クラス全体の雰囲気、
そしてその子の特性をしっかり考慮しながら———
少ないセリフでも「このひとことを大事に言えるようにしよう」と、
担任は、一人ひとりの舞台の上で頑張る姿を思い浮かべながら、配役を決めています。
保育園・幼稚園の先生はどうやって配役を決めているの?
配役を決めるまでには、実はたくさんのステップがあります。
まずは劇の題材選びから。
クラスの雰囲気や子どもたちの様子を見て、どんな物語なら無理なくみんなで楽しめるのかを考えます。
繰り返しのやり取りが多いものがいいのか
 (例:おおきなかぶ、てぶくろ)
全員が一斉に出てくるものがいいのか
 (例;7ひきのこやぎ、さるかに合戦)
クラス人数と、役の数を照らし合わせながら検討していきます。



園によっては「1人役は一人」というところもあります。
逆に「主役が何人もいる」という園もあります。
私は、どちらも経験していますが、1役複数の方がメリットは多いですね。
そのうえで大切なのは、
「この役は誰ができるのか?」ではなく、
「この子にはどんな役が合っているのか?」という視点。
主役のように出番の多い役が必ずしも、その子にとっての”いい役”とは限りません。
セリフが多いことが、プレッシャーになる子もいますから。
まずは、物語を理解させ、役ごとの魅力を伝えることから始めます。
「この役は最初しか出てこないけれど、セリフが多くてちょっと難しいことばもあるの」
「この役はセリフは少ないけど、踊りがあって楽しいよ」
「この役は元気いっぱいのキャラクターだから、大きな声で元気よくセリフが言える子にやってほしいな。」
こうして説明することで、こどもたちは、「自分はどの役ができそうかな?」「どの役をがんばろうかな?」と考えるようになります。
話すときに少し”誘導ワード”をいれることで、
保育士が思い描く配役と、子どもの希望が自然と一致することも多いんです。
それでも、どうしても偏ってしまう場合には、一人ひとりとじっくり話します。
決して、「先生が決めたから」ではなく、自分で選んで決めたという納得感を持って取り組めるように。
セリフの量や出番の多さだけでなく、その子の性格・得意・苦手・頑張りたい気持ちを踏まえて、役は決まります。
確かに物語によっては「主役」「脇役」と呼ばれる立場があります。
でも、保育士はそうは考えていません。
保育園や幼稚園の発表会は、『みんなが主役』です。
それぞれの役を自分なりに演じきることで、子どもは自信を持つことができます。
保育士は、全員が舞台の上で輝ける形を目指しているんです。
配役にモヤモヤしたときに知ってほしい3つの考え方
発表会の配役を聞いて「どうしてこの役なの?」と感じること、ありますよね。
でも、そのモヤモヤの裏側には、実は子どもたちの成長や、先生たちの深い意図が隠れています。
ここでは、少し気持ちがラクになる3つの視点をお伝えします。
子どもは”自分の役を通して”ぐんと成長する
「主役=いい役」というわけではありません。
子どもにとっては、どの役も自分が頑張れる大切な役なんです。
「面白そうだから」「衣装がかわいいから」「○○ちゃんと一緒がいいから」
———子どもにはその役を選んだ理由は、大人が思うよりずっと素直で純粋です。
そして、どの役でも意欲をもって取り組む中で、セリフを覚えたり、人前で声を出したり、友達と協力したりと、たくさんの成長が見られます。
発表会を終えるころには、役の大小に関係なく、子どもは大きく成長しています。
本番までの本番までの時間が宝物
保護者が見られるのは、ほんの数分の本番。
でも、保育士たちは毎日の練習の中で、子どもたちが少しずつできるようになっていく姿を見ています。



昨日より大きな声が出てたよ!
友達のセリフまで覚えて一緒に言っていたね~
失敗しても泣かずによく頑張った!
そんな小さな成長が、子どもたちにとっては大きな自信の芽となります。
発表会は「うまくできたかどうか」だけではなく、ここまで頑張ってきた時間を、たくさんの人に見てもらう日なんです。
他と比べるより、わが子らしさを見つけよう
発表会の日、どうしても他の子と比べてしまう瞬間ってありますよね。
でも、子どもたちは「○○ちゃんより上手にやりたい」と思って演じているわけではありません。
保育園・幼稚園の発表会は、「みんなで一つの作品をつくる場」です。
先生たちは、一人ひとりがその子らしく輝ける瞬間を大切にしています。



発表会まで、「みんなでがんばろうね。」「みんなで素敵な発表にしようね。」と何度もよく話しています。
セリフが短くても、踊りが少なくても、
その子の表情や仕草にその子しか出せない魅力が詰まっています。



「○○ちゃん、あのセリフがちゃんと言えた…泣」
「忘れずにしっかり移動できた~!」
本番は、裏で感動して泣いてる保育士多いんですよ(笑)
モヤモヤを感じたときこそ、「うちの子らしく頑張ってたな」と、温かい目で見てあげてくださいね。
それでも気になるときの、先生への伝え方
子どもが家で
「本当は○○がやりたかったのに、言えなかった…」
「先生が勝手に決めたから、やりたくない。」
———こんな言葉を口にすること、ありますよね。
そんなときは、モヤモヤを抱えたままにせず、先生にやわらかく伝えてみるのがおすすめです。
感情よりも確認の気持ちで話してみよう
「家でこんなふうに話していたんですが、園ではどんな様子ですか?」
そんな聞き方なら、先生も状況を丁寧に説明しやすくなります。
…というのも、園では子どもが納得して決めたのに、
家に帰って話したりしていると「やっぱりこっちがよかった」と気持ちが変わることもあるんです。
保育士としても、「えっ、そんなこと言ってたの?!」と驚かされることがあります。
だからこそ、まずは子どもの言葉の背景を先生と共有することが大切です。
伝え方ひとつで、先生との信頼関係が深まる
「どうしてこの役なんですか?」よりも、
「どんな思いで、うちの子はこれを選んだんでしょう?」
「この役になった決め手はなんだったんでしょう?」
そんな聞き方なら、先生も経緯を説明しやすくなります。
ただ、感情的になることは避けましょう。
冷静に尋ねることで、先生の意図や子どもの成長ポイントに気付けることが多いですよ。
子どもの気持ちの味方でいてあげよう
「ママはこの役の方がいいと思うよ」と伝えてしまうと、
子どもは「ぼくが選んだ役はダメなのかな?」と感じてしまいます。
子ども自身が選んだ気持ちや、頑張ろうと思っている気持ちを尊重してあげましょう。



「○○にばっちり合ってる役だね!ママ、楽しみにしてるね!」と伝えてあげると、子どもは全力で頑張れますよ。
そして、先生とママ・パパ、みんなが応援してくれることで、子どもは安心して取り組めます。
それが、発表会を通して子どもが自信をつける一番の近道なんです。
まとめ|配役は”子どもが育つきっかけ”のひとつ


発表会の配役は、子どもの性格・得意・苦手を考えながら、
「どの子も輝けるように」という思いで決めています。
目立つ役だけが「いい役」なわけではなく、
子ども一人ひとりにとって「今のその子にぴったりの役」があります。
その役をやりきった経験で得た自信は、必ず次の成長につながります。
もし、モヤモヤした気持ちが出てしまうときは、「子どもの気持ちを理解したい」という気持ちで先生に話してみてください。
ママ・パパと先生が同じ気持ちで見守ってくれることで、子どもは安心して発表会に臨み、本番では自信に満ちあふれた最高の表情を見せてくれます。
発表会は、上手にできたかどうかも大切ですが、それ以上に頑張った過程を一緒に喜ぶ日。
子どもの「できた!」を見つけて、一緒に喜びあってくださいね。
▶発表会では定番の桃太郎。この「も~もたろさん、ももたろさん♪」の歌、6番まであるの知ってました?
桃太郎の歌詞には子育てのヒントまで隠れています!









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