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一人担任って、大変だけど自由。|30人分の責任と、成長した姿に救われた話【保育現場のリアル 第3話】

第3話

一人で30人以上の子を担任していた、あの4年間。
体力も気力も使い果たす毎日だったけど、今思い返せば、学びとやりがいにあふれていた日々だった。

子どもの成長を、誰にも譲らず独り占めできる幸せ。

でも———
書類作成も製作準備も全部ひとり。時には怪我をして松葉杖で登園し、仕事をしたこともあった。

それでも続けらたのは、子どもたちの存在が、私のすべてだったから

いまはもうできない。
だからこそ、あの時期にあの経験ができて、本当に良かった。

これは、そんな「私の全力だった4年間」の記録。

一人担任で悩んでいる人。
一人担任が主となる職場と、複数担任が主となる職場で迷っている人に、届いてほしい。

目次

一人担任という”自由”と”責任”

保育士

一人担任の一番の良さは、“自由”であることだと思います。

歩合制のサラーリーマンとは違い、ノルマがあるわけでも、頑張ったからと言って給料が上がるわけでもありません。
でも、頑張ったら頑張った分だけ、子どもたちの成長した姿を一番近くで感じられる、という最高の特典が付いてきます。

保育士をしていると、この成功報酬は、何ににも代えがたいものだと思います。

お金では絶対に買うことのできない”やりがい”という気持ちに満たされます。


しかしながら、責任も全部自分です。
何か問題が起きてしまったときには、逃れようがないのです。
だって、私しかいないのですから。

この責任が自分にのしかかるということを、しっかりと理解できていてば、安易なことはできません。

だから、私はこの“責任がある”ということを、プラスに捉えるようにしていました

何かあったらどうしよう。
私にちゃんとできるだろうか。

そんな不安は自分で吹き飛ばすしかないのです。

そのために、日々学びながら、精一杯子どもたちと関わりました。
それを繰り返していくことで、必ず返ってくるものがあるんです。

このすべて自分次第”で、良くも悪くもなるという結果ありきの『一人担任』が、私にはとてもやりがいを感じられるものでした。

全力保育の中で起きた、松葉杖事件

松葉杖

常に全力で保育していた3年目。
初めての年中児の担任に奮闘していた、あの年———


課外保育で、公園みたいな施設に行っていました。
帰りの時間になったので、園内に子どもたちが残っていないかと、走り回り確認していると———


グキっ!! スコーーン!!! _(:3」∠)_


階段を踏み外し、派手にすっころびました!!


———全治1か月の靱帯損傷。松葉杖生活の開始。


情けない~

本当に情けない~~~~

でも、それでも、一人担任だから「休む」という選択肢は、あの頃の私にはありませんでした

子どももたちはまだ5歳なのに、動けない私を気遣い、たくさんお手伝いをしてくれました。
私も今まで以上に、「言葉だけで伝える」工夫をしました。
しっかりした子にはどんどん頼り、他の子のフォローをお願いしたりしました。
月齢が低い子も、頼らず頑張ろうとする姿がみられました。

そうする中で、クラス全体で「自分たちでできることはやらなくちゃ」の雰囲気が出来上がったのです。

これは、言葉でどうにかできることではありません。
私が怪我をしたことで、思いやる気持ちが育ち、助け合う気持ちが生まれました

物理的にはとても大変で、職場にも、子どもたちにも迷惑をかけてしまいました。
けれど、あの怪我のおかげで、子どもたちは大きく成長してくれました。

あの時、他の先生がフォローに入ってくれていたら、あんなふうな成長は見られなかったと思います。

これもひとつの「一人担任の良さ」であると、感じられる出来事でした。


———しかし、やはり大変ですので、怪我のないよう十分にお気を付けください(笑)
「この成長を見るために、また怪我をしますか?」と問われたら、それはもちろん「NO」です。

一人で奮闘した4年間で得たもの

遊ぶ子どもたち

大学を卒業し、私は幼稚園に就職しました。
新卒1年目から年長クラスの担任を任されました。在籍32名のクラスでした。

そこから、
→年長 30名
→年中 33名
→年長 31名

幼稚園に努めた4年間で126名の子どもたちの成長を、間近で見ることができました。

近くにいるときは、卒業後も小学校の運動会を見に行ったりし、近況を知ることができました。
しかし結婚を機に県外に引っ越してしまったため、なかなか会える機会がなくなってしまいました。
それでも、毎年の年賀状のやり取りは続けていました。
もちろん全員ではなかったものの、たくさんの返信があり、年一回の情報共有がとても楽しみでした。

数年前、26歳になった卒園児と会うことができました。
幼稚園の頃の話を、いまでもよく覚えていて、とても楽しそうに話してくれました。

あの頃は、正直必死で、自分のやっていることに自信が持てずにいたこともありました。

でも、立派に成長した姿を見ることができ、あの頃精一杯関わった時間は、決して間違っていなかったと思わせてくれたのです。

保育している時には、わからない。
だけど、確実に私は「この子の人生に関わっていた」という軌跡を残しているのです

当時のあの子たちと、また会えたことで、たくさんの気づきを再びもらいました。

「適当になんかできないな。」

そう、改めて思えたのです。
この仕事をしていることが、本当に幸せだと心の底から思えました。

経験をしたからこそ、今の私が思うこと

笑顔の子ども

私は、今は複数担任の職場で働いています。
子どもたちの成長をチームで見守れる安心感。すぐに相談できる環境にも助けられています。


けれど、本当は、心のどこかでまた「一人担任をしたい」と思う気持ちがあるのも事実です。

でも、家庭がある今、それは現実的になかなか難しい。
帰ってからバタバタの家事、子どもたちの学校行事や部活の予定———
そして何より、家族との時間。
どれも、今の私にとっては大切だから、無理はできない。


それでも、やっぱり思うのです。

保育士として、一度は「ひとり担任」を経験してほしい。

大変なこともある。責任も大きい。
でも、だからこそやりがいがある。
子どもたちの成長を、独り占めできるんです。

全部自分でやるからこそ、感じられるものがある。
全部自分でやらなきゃならないから、見えるものがある。

その経験は、きっと一生モノになります。


私が今でも保育士を続けているのは、幼稚園でひとり奮闘した「あの4年間」があるから。
あの4年間で得たものは、今の自分の土台であり、大切な宝物です。


そんなふうに、向き合って保育できる環境が、あなたにも見つかりますように。

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